diary

  • ラプンツェル。
  • 2013.01.24

昔々、あるところにラプンツェルという女の子がいました。
彼女は生まれてからずっと、悪い魔女の手で高い高い塔に閉じ込められていました。

ある夜、いつものように外に出たいと泣いていると、閉まっているはずの窓からふわっと風が吹きました。
顔をあげてみるとそこには見知らぬ男の影が。

「ラプンツェル。」

その影は彼女の名を呼びます。
彼はおもむろに雲間からひょひょいと光る鍵の欠片を集め、閉ざされた窓を開きこう言うのです。

「連れて行って差し上げましょう。」

ここは高い塔の上、飛び降りて助かる訳がありません。
しかし一生閉じ込められているよりはいっそ、と彼に身をゆだねることにしました。

「いざ、往こうか」

彼の声と同時に思い切って、窓枠を蹴りました。
するとどうでしょう、落ちることなく浮いているではありませんか。
街の灯りが足元遥か遠くに見えます。
彼女は落ちまいと彼の手を強く握ります。

「手を繋いで居て、僕の背にはこの羽が有るから。」

その声に彼女が顔を上げると、目に入ってきたのは大きな黒アゲハの羽。
彼は蝶の化身だったのです。

・・・

彼女が逃げ出したことは、誰にもまだ気づかれていません。
彼女ははやる気持ちでもっと遠くへ、と急かします。

初めてみる外の世界はあまりに広く驚くばかりです。
そんな彼女に星座達はこっちへおいでと誘います。
誘われるままについて行こうとする彼女に蝶はこう言いました。

「手を繋いで居て、この夜空は余りに広過ぎる。
迷い込めば、次の朝に出合えなくなるから。」

彼女は危うく夜の闇の奥へ引き込まれるところだったのです。

・・・

ずいぶん遠くまで飛んできました。
空も白んでいます。
ここまで来れば追っ手も来ないでしょう。
落ちまいと彼の手を握り締めるラプンツェルに蝶はこう言います。

「手を放して、君の背にはその羽が有るから。」

振り返ると彼女の背にも美しいアゲハ蝶の羽が生えていました。
朝日を受けて飛ぶ彼女は、まるでアゲハ蝶そのもの。

そして彼女は広い世界へと旅立って行きましたとさ。

おしまい、おしまい。